相手方に弁護士がついた方へ
他の相続人と相続の話し合いをしている最中、あるいは、これから話し合いをしようと思っていた矢先に、相手方が弁護士をつけ、急に書面が送られてくるというケースは少なくありません。
このような連絡を受けるとほとんどの方は驚き、中には、相手方の対応を腹立たしく思われる方もいらっしゃるかも知れません。
相手方に弁護士がついた場合、あなたが弁護士をつけずにご自身で対応を進めると、不利な状況に立たされてしまう可能性があります。
こうしたケースにおいては、相手方と対等に交渉するためにはこちらも弁護士をつけて交渉や調停を進めることを強くお勧めいたします。
当事務所の解決事例
【概要】
母親の遺産に関する兄弟間の紛争案件です。相手方(兄)の代理人として弁護士がついて、弟に対して調停を提起してきた事件で、当事務所の弁護士が弟の代理人として調停段階から受任しました。
【弁護士の対応】
当初、相手方は、岡山の実家の土地(母親名義)についてほとんど価値がないなどと主張して預貯金のみを半分に分けるという主張をしていました。しかし、当事務所の弁護士において、岡山の不動産について不動産業者の協力を得て査定をとった結果、不動産について1500万円ほどの価値があることが判明しました。
【結果】
その結果、最終的には、裁判所においてその査定額を前提に、2分の1ずつという割合で和解することになりました(預貯金とは別に、兄が不動産を相続して、当方に代償金として750万円を支払うという和解になりました)。
【概要】
父親の遺産に関する兄と妹との紛争案件です。元々、兄は15年ほど前から、父親のアパートの一室を無償で借りて管理人代わりの仕事をしていました。父親が亡くなった後、妹に代理人弁護士がついて、「本来収益物件であるアパートの一室に当方依頼者(兄)が無償で居住していた点は特別受益にあたる(家賃月10万×12ヶ月×15年=1800万円)。その分を遺産分割にあたって考慮すると、妹の取り分がかなりの分を占めることとなる。そのためこのアパートは妹のものにすべきであり、兄には家を出て行って欲しい。」などと述べてきたため、兄が驚いて当事務所に相談に来ました。
【弁護士の対応】
当事務所の弁護士が過去の裁判例などを調査した結果、「仮に賃貸用物件であっても無償居住していただけでは特別受益に当たらないことが多い上、今回は、兄は管理人の仕事もしていたため居住は正当な対価と考えられ、より一層、特別受益に当たらない」という結論に達しました。
【結果】
それを元に相手方の代理人と交渉した結果、特別受益に当たらないことを前提に、不動産を売却してその売却代金を2分の1ずつ分けるという遺産分割協議が成立しました。
【概要】
父親の相続に関して、前妻の子供達(2名)と後妻との間で争いとなりました。3年前に後妻と結婚して父親が名古屋に移動しました。父親が亡くなった後、後妻の代理人弁護士から前妻の子供達(2名)に対して、残高がほとんど0円になった残高証明書をつけてきた上で、「預貯金はほとんど残っていないから、相続を放棄してほしい。」という依頼がありました。しかし、前妻の子供達は、3年前に父親が結婚する段階で、父親の預貯金に1500万円以上ものお金が入っていたことを知っていました。そこで、「父親には年金もあったのにわずか3年で1500万円もあった預貯金がほとんど残っていないということは考えられない。」として当事務所に相談に来ました。
【弁護士の対応】
この件では、まず、当事務所の弁護士において父親の遺産に関しての財産調査を行いました。その結果、死亡直前の半年間に1000万円以上もの金銭が父親名義の口座からカードにて引き下ろされていることが判明しました。当事務所の弁護士において、「既にその頃は、父親が病気で入院中だったので、その金額は後妻が下ろしたとしか考えられない。その分は遺産に戻すべきである。」と主張しました。
【結果】
相手方の弁護士は当方の主張を受け入れ、生活費や病院代に使ったもの以外については全て遺産に戻した上で遺産分割協議を成立させることができました。
相手方に弁護士がついたとき、こちらにも弁護士に依頼するメリット
法律に基づいた適正な数字での解決が期待できる
上記の事例1で見たように、不動産の価格については、固定資産評価や路線価、公示価格など、色々な数字があります。相手方に弁護士がついた場合に、相手方にとって都合のよい数字を主張することがありますので、その数字を鵜呑みにすると、あなたが損をしてしまう場合があります。また、上記事例2で見たように特別受益に当たるかどうか(寄与分にあたるかどうか)、というような点については、なかなか一般の方では判断が難しいこともあり、相手方の弁護士の主張が法律的に正しいかどうか、判断できない場合もあろうかと思います。
このような場合に弁護士を立てることによって、法律に基づいた適正な数字にて和解(協議)をすることができます。
遺産の全体像を把握できる
事例3で見たように、相手方に弁護士がついた場合に、相手方弁護士も本人の言い分や本人が作成した相続税申告書の数字のみを信じて交渉してくることもあります。こうした場合に、相手方弁護士の言い分を全て信じてしまうと、法律上、当然に取得できるはずの相続分をもらい損なうケースも出てきます。相手方の弁護士は、あくまでも相手方のために動くものであり、当方の利益を守るために動いてくれる訳ではありません。
事例3のケースでは、当方の依頼者に当事務所の弁護士がついて遺産調査を行った結果、父親が死亡する直前の口座からの現金の引き出しが判明したものです。まずは、遺産の全体像が分からないと交渉になりませんので、その点は、弁護士に入ってもらって調査した方がいいでしょう(相手方弁護士が調査した結果が送られてくることもありますが残高証明書などしかついていないこともありますので、きちんと死亡前ある程度の期間は遡って調査した方が良いでしょう)。
相続人・相続財産を調査したい方へ精神的な平穏を保てる
ただでさえ身内が亡くなっていることに加えて、相手方に弁護士がついて色々と主張されることによって精神的に疲弊してしまう方も少なくはありません。あなた自身が弁護士に依頼をすれば、あなた自身が交渉する必要がなくなります。
その上で、よく分からないことや相手方の主張の妥当性について相談することによって、見通しが立ち、精神的な平穏を保てることになります。
なお、あくまで当職の経験則上ですが、当事者同士もしくは弁護士と当事者の一方で話し合いをするよりも弁護士同士で話をした方が感情的にならずに素早く妥当な解決を導けることが多いです。
弁護士を選ぶ際のポイント
相続分野は、人間関係から不動産、金銭、証券など多岐にわたる論点を扱うため、相続事件を数多く解決した経験のある弁護士には様々な事件に対応できるノウハウがある一方で、経験の少ない弁護士では依頼者の方にとって、最善の提案ができないおそれがあります。また、場合によっては無用に紛争を拡大させ、解決まで多くの時間を費やすおそれもあります。
あまり知られていないことですが、一般の弁護士にとって相続問題の依頼を受ける機会は多くありません。
これまでに、当事務所では400件以上の相続問題の相談をお受けしております。当事務所は相続事件の実績が豊富にありますので、安心してご相談ください。