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母親の自称友人から母親の遺産の相続を阻止し、1億円以上の遺産を獲得した事例

ご依頼者属性:Cさん

年代:70代

被相続人との関係:子ども(他の兄弟がいたが既に鬼籍)

相手方:母の近くに住む自称友人

エリア:藤沢市

相続財産

現預金(1億前後)、実家不動産(500万円程度)

争点

遺言無効

相談に至った経緯

ご依頼者様が当事務所を訪れた理由は、母が書いたとされる自筆証書遺言が2通発見され、同遺言により利益を得る自称友人に対し、遺言無効を主張するというものでした。

今回ご相談いただいたご相談者様とお母様は生き別れの親子でした。お母様が亡くなる直前に成年後見人から連絡が行き、お亡くなりになる最後になんとか交流を持てたとのことでした。面会時のお母様は認知症が進行しており、会話は中々難しかったのですが、息子であるご相談者様のことはなんとか理解することができたとのことでした。

さて、お母様が遺した遺言書の内容は、遺産の半分を近所に住む自称友人に、残りの半分はご依頼者に遺すといった内容でした。

お母様は、亡くなる5年前の7月に長谷川式で認知症の検査をし、12月に成年後見が認められておりますが、その少し前の8月に遺言を作成し、翌年1月に2度目の遺言作成をしました。

お母様が成年後見人をつける際に、自称友人が大きく反発した点、また、8月以降自称友人がお母様と一緒に銀行を訪ね、お母様の現預金の一部を受領するといった動きがありました。

ご依頼者様はそのような背景から、この自称友人を信じることができませんでした。

弁護士が対応したこと

事件を進めるうえで、お母様を担当していた成年後見人が所属している○○市の社会福祉協議会の方に弁護士がヒアリングを行いました。その結果から、自称友人はかなり高齢でしたが判断能力に問題はなく、むしろ母の資産に強く執着していたことがわかりました。

ご依頼者様からのお話や、外部の方のお話から、通常の遺贈とは違うと考え、遺言無効で戦うべきと判断しました。

そして検認された遺言を2通確認した際に、考えられる可能性が2つありました。

1つ目は、遺言が偽造された疑いがあるというもの。

2つ目は仮にお母様が遺言書を書いたとしても、書いた時点でのお母様の意思能力・判断能力がなかったのではないかということでした(いわゆる「運筆」によるもの)。

この2点を明確にすべく、○○市の福祉協議会の事務所に赴き、5年分の成年後見に関する資料を閲覧させてもらいました。

お母様が、遺言書を書いたのは8月と翌年1月ですが、翌年1月の遺言については、成年後見成立後の作成であることから、遺言作成には医者2名の立ち合いが必要となるため、同遺言書の無効は確定しました。

8月のものについては、成年後見の審判が出ていなかったため、この成年後見の資料から読み解いて認知能力がなかったことを証明する必要がありました。また、当時を遡ると8月時点でお母様がそもそも字を書くという行為自体をしておらず、筆跡が一切残っていなかったことがわかりました。

更に、その直前の7月に行った長谷川式の認知症テストにおいては、判定不能という状況でしたので、遺言能力がなかったことは間違いないことがわかりました。

このような状況でしたので、下記2点について判例研究を行いました。

・どの程度の判断能力で遺言能力ありとされるか

・成年後見の審判が出る半年前・1年前・2年前を遡ってどれだけ前から遺言を無効にできるのか、遺言能力なしと判断されるのか

研究をしたところ、遺言無効確認の裁判を起こせば勝てる見込みがかなり高いことがわかりました。そのため、裁判を提起する前に、相手方の自称友人に、裁判をしても当方が勝訴する見込みが非常に高いことなどを添えた、強い意思を表す内容証明郵便を送付しました。

結果、相手方は心当たりがあったようで、すぐに遺言の無効を認める連絡があり、遺贈の放棄を認めさせることもできました。

上記の内容の合意書を作成し、印鑑証明も取り付けることができ、無事解決に至りました。

結果

当時、お母様が保有されていた資産が1億円を超えており銀行もかなり慎重になっていました。自筆証書遺言が検認されてしまうと、相手方(自称友人)は遺産の半分である預金を払戻す権利を得ることができてしまいます。これが非常に危険だと感じた当事務所の弁護士は、遺言が検認された時点ですぐに該当金融機関へ電話を入れ、払い戻しの受付を止めてもらいました。

高齢であった自称友人でしたが、用意周到である点や、周囲から見ても資産への執着が分かるほどでしたので、預金の引き出しの恐れがありました。

またすぐ裁判所からも仮処分を出してもらえるように、弁護士から手紙を出して無視をされたりした時点ですぐに裁判に移れるように裁判の準備もしていました。

結果的に手紙によってすぐに遺言無効を認めましたが、抵抗してくることは十分に考えられるような事案であり、入念な準備が必要な事件でした。

結果的には1円も遺産は自称友人には渡ることはなく、依頼者が受領することができました。また、5年前に引き出された500万円は○○市の弁護士が対応し、きちんと返還させていたこともわかりました。

担当弁護士の所感

金融機関へ払い戻しを止められたことが、今回非常に有効な取組みでした。

金融機関への払い戻しの停止は裁判所による仮処分が必須であると考える弁護士は多く、仮処分には時間がかかることからその裁判所への申立て自体を躊躇されることもあるかと思います。

しかし、銀行のリスク対策上自筆証書遺言の払い戻しは銀行も忌避するため、ダメもとでも銀行に連絡すると、払い戻しを止めることができることがあります。

今回はすぐに銀行に連絡できたことで、調査・交渉中に自称友人が勝手に預貯金を引き出すことを防ぐことができました。

また、今回のように相続人ではなく、遺産に強く執着しているような第三者との交渉は注意が必要であり、初動対応が非常に重要な事件でした。

こういった方は、ただ遺言を偽造したのではないかと指摘してもなしのつぶてになることが想定されたので、遺言能力や遺言無効になる場合の数百の判例を読み込み、判例をベースに戦略を立てたことが奏功したと言えます。

さらに、本来情報公開請求には通常2週間以上申請・承認までにかかりますが、○○市の社会福祉協議会の成年後見部のご協力があり、非常にスピーディーにご対応いただけました。

そこで読み解いた資料は段ボール箱2箱分になりましたが、すべて管理され残っていたため、非常に有効な資料になりました。この情報を読み解いた結果、遺言に有効性はないことが明らかであると判断することが出来ました。

この記事を担当した専門家
弁護士法人 湘南LAGOON 代表弁護士 高宮隆吉
保有資格---
専門分野相続問題全般(遺産分割、遺留分、相続税、家族信託、遺言など) 不動産、企業顧問
経歴

平成19年中央大学法科大学院卒 
同年司法試験合格 
平成20年弁護士登録 
平成21年横浜市の法律事務所勤務 
平成23年横浜市関内にて高宮法律事務所設立(独立開業) 
平成24年藤沢ラグーン法律事務所設立 
平成27年法人化に伴い「弁護士法人湘南LAGOON」設立 
平成30年横浜市鶴見区に「鶴見オフィス」開設

平成27年から現在まで 宅地建物取引業協会湘南支部 顧問 
平成23年から平成27年まで関東学院大学法科大学院講師

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