弟から遺留分を請求されたが、遺産分割調停で母の遺留分生前放棄を抱き合わせで合意できた事案
ご依頼者属性:Oさん
年代:60代 男性
被相続人との関係:兄弟
相手方:弟(50代)
エリア:鎌倉
相続財産
預貯金、金融資産、不動産(23区内の空き家、鎌倉の実家)、骨董品
争点
生前贈与の金額(空き家の評価額)
相談に至った経緯
学生時代に素行不良であった弟さんは問題を起こし、20歳以降、家族と連絡を取ることがなく、半勘当状態で別居していました。
しかし今回お父様が亡くなられたタイミングで、亡くなったことを聞きつけた弟は、父へのお悔やみの言葉もなく、弁護士を通じて遺産の法定相続分を主張する連絡をしてきました。
Oさんは30年以上連絡もとっておらず、さらに家庭内で問題を起こした弟が父の遺産を目当てに突然連絡してきたことに対しご立腹されていました。
このような場合の対応方法が分からずご相談にいらっしゃいました。
弁護士が対応したこと
相手にも弁護士が就いていましたので、こちらも弁護士を介して対応しました。
生前お父様が公正証書遺言を書かれていたため、その遺言を元に遺産の範囲を把握し、遺産の評価額を確定し、遺留分を計算し、支払いに応じるべき金額を算出しました。
また遺言の付言事項には、弟さんの素行不良の当時の苦言や改善を希望するお父様なりのメッセージが書かれていましたが、それについて相手方である弟さんはさらに腹を立てていました。
相手方はOさんに生前贈与されていた23区内の空き家について不動産会社を介してかなり高い評価額をつけてきました。
さらにOさんが所有(現在お住まい)している県内のマンションについてもお父様に購入してもらったものであろうと推測し、それを特別受益だと訴えてきました。
空き家の評価額と特別受益について
まず、高額に評価された23区内にある空き家の評価額を適正にするために、当事務所も不動産会社に査定を取得しました。
また、路線価と固定資産評価額を基準にして割り戻し計算を行い、相場の評価を計算し直しました。
さらに、当該物件は物件に面した道路が細かったため、解体時に費用が大きくかかることが想定され、その解体にかかる費用の控除も求めることにしました。
※売却する場合解体が前提になるため
また、Oさんがお住まいのマンションについては、根拠のない主張でしたので、特別受益の訴えを否認しました。
以上のやりとりを書面により、相手方弁護士と交渉していましたが、23区内の空き家の評価額について1,000万円以上の評価額に差がでていたこと、さらにOさんのお住まいのマンションはお父様の資金援助があったものだと譲らなかったため、相手方から調停を申し立てられました。
遺産分割調停では
当事務所が作成した査定書と路線価と固定資産評価額から算定した評価額を元に23区内の空き家の評価を主張立証しました。
相手方が主張していた評価額が一般的な価格よりもかなり高額に吊り上げられており、当方からその点を指摘したところ、裁判所もそれに理解を示したため、ほとんど当事務所が提案した評価額通りに決着しました。
続いて、Oさんのお住まいであったマンションについても、特別受益は相手方に主張責任があること、さらに特別受益の持ち戻し期間(時効のようなものとお考えください)が経過していたため、相手方も主張することを諦めました。
結果
弟さんに支払う遺留分は800万円前後になりました。
相手方が主張していた空き家の評価やマンションの特別受益が認められた場合の遺留分額は1500万円を超えると想定されていたため、半分近く遺留分額を減額することができました。
今回はお父様の相続でしたが、将来的にはお母様が亡くなった際にまたトラブルになる可能性が非常に高かったため、支払う遺産よりも100万円程度を上乗せをして、家庭裁判所において遺留分の生前放棄手続をさせました。これによって、仮に将来お母様が亡くなられた際に弟さんから何か遺産相続で主張される心配を無くすことができました。
またこの遺留分の放棄はお母様が遺言を作成されることが前提となるもののため、今回を期にお母様の公正証書遺言も作成いたしました。
これにより、Oさん家族は今後の相続トラブルの悩みから解放されることになりました。
担当弁護士の所感
兄弟間の争いであり、感情的対立が激しい事件でした。
また、ご自身で購入されたマンションについてお父様の援助があったのではないか(特別受益があったのではないか)と主張されたことに対しOさんは非常に憤慨されていましたが、相手方が主張を諦めざるを得なかった結果に非常に満足されていました。
また、遺留分の生前放棄をさせることができたことで、今後の悩みも無くなり、安心されていました。