不動産査定を通じて不動産の適正な評価額を得て、相手方から請求された金額を大幅に減らすことができた事例
ご依頼者属性:Sさん
年代:50代 男性
被相続人との関係:兄(長男)
相手方:妹(長女)
エリア:鎌倉
相続財産
不動産(収益不動産2つ)、自宅(100坪以上)、高級別荘地の別荘
争点
不動産評価額、寄与分
相談に至った経緯
Sさんの父親が亡くなったとき、妹が「お母さんの相続分はいらない」と念書を書いて差し入れしたため、現預金はすべて妹が相続し、ご依頼者は父親の会社や不動産、収益物件のローンなどを相続した。
しかし、母親が亡くなったタイミング(今回)で、妹から「やっぱり遺産をほしい」という連絡が来た。また、妹さんは弁護士に依頼し、不動産の査定を出し、相続分として約7,000万円の相続分を請求してきた。
当然ローンなども考慮されていない高額な遺産の取り分を現金での主張であり、当時の約束も破るなどご依頼者は納得いかなかったため当事務所にご相談されました。
弁護士が対応したこと
Sさんも、家を存続させるためには全ての遺産を長男である自分が相続すべきといわゆる「家督相続的なお考え」の強い方でした。
しかし日本の法律では、生前の相続分の放棄は認められておらず、さらに家を守るからといって遺産分割を経ずに全ての遺産を特定の相続人が相続することは認められていないため、法律関係を丁寧にご説明させていただきました。
ですが、Sさんとしてはなかなか納得することはできませんでした。
そのため、当事務所としても、同念書は相続分の放棄と捉えず、一度父親の現預金を相当額相続し、母親の遺産は不要と念書を作成しておきながら、後になって母親の遺産を請求することは民法1条の2の信義則違反(禁反言)ではないかと主張しました。
この主張は法律家であれば、にわかに受け難い主張であることは理解しておりましたが、ご依頼者のお気持ちに配慮し、1つでも可能性がないかと考え、相手方に主張しました。
当然主張は退けられましたが、相手方の心情としては、(父親の相続の時と母親の相続時に手のひらを返したことについて)後ろめたさを感じていたため、当事務所が主張した不動産評価の減額、寄与分、調整金の主張などを受け入れ、結果的に当初提示されていた遺産額から大幅に減額させることができました。
寄与分について
寄与分に関して、Sさんとその妻は、要介護3の母親を5年以上介護していました。他方、妹は遠方に住んでいたため、介護含め家のことはほとんど手伝っていませんでした。
同介護により寄与分500万円が認められました。また、母親が負担する貸アパートのローンの繰り上げ返済に長男が1,000万円支払ったため、合計1,500万円の寄与分が認められました。
結果
当初約7,000万円の相続分を約半分の4,200万円前後にすることができました。
うちの紹介した不動産会社が文筆した不動産を高額に売却したこともあり、本来現預金がなく支払うことが難しい状況でしたが、結果的には持ち出しがなく、相手方に相続分(4,200万円)を現金で支払うことができました。
担当弁護士の所感
今回の相続事件では、総資産の9割以上が不動産資産でした。このような事案では不動産評価の金額が相手方へ支払う相続分(代償金)に直結します。
そのため、当事務所も複数の不動産会社から査定を出してもらいますが、路線価と固定資産評価額から実勢価格を割り戻して
算出することにより、相手のバイアスがかかった不動産評価に客観的な指摘を加えます。
このように不動産資産の占める割合が多い相続財産の場合は、現金による代償金が多額になる傾向があります。その場合には不動産を分け合って分割したり、分筆による分割も考えられますが、その前に不動産評価を明確にしておける技術が必要です。